都市で役立つテクノロジー防災:情報収集と連絡手段の確保術
気候変動による異常気象の増加や、地震リスクなど、私たちが暮らす社会は様々な変化に直面しています。特に都市部では、人口密集や複雑なインフラ構造により、独自の災害リスクが存在します。こうした不確実な時代において、災害発生時にどのように情報を得て、大切な人と連絡を取り合うかは、私たちの安全と安心を確保する上で非常に重要な課題となります。
災害への備えというと、食料や水の備蓄、避難場所の確認などが思い浮かぶかもしれません。もちろんこれらは不可欠な準備です。しかし、現代においては、テクノロジーを賢く活用することが、これらの物理的な備えと同様に、あるいはそれ以上に重要な役割を果たすようになっています。スマートフォンやインターネットといった身近なツールが、いざという時に命綱となる可能性があります。
この記事では、都市生活を送る皆さまが、テクノロジーを効果的に活用して災害に備えるための具体的な方法、特に情報収集と連絡手段の確保に焦点を当ててご紹介します。日頃からの準備を通じて、変化に対応できる力を高めていきましょう。
災害時の情報収集にテクノロジーを活用する
災害発生時、あるいは発生が予測される場合に、正確で最新の情報を迅速に入手することは、身の安全を守るための第一歩です。テクノロジーは、多様な情報源へのアクセスを可能にし、このプロセスを大きく助けてくれます。
防災関連アプリの活用
多くの自治体や気象庁、あるいは民間企業から、様々な防災アプリが提供されています。これらのアプリには、以下のような機能が含まれていることが一般的です。
- 緊急地震速報や津波警報などのプッシュ通知: 警報や注意報が発表された際に、自動的にスマートフォンに通知が届きます。事前の設定が必要な場合が多いため、インストール後に設定を確認しておくことが推奨されます。
- 気象情報や河川水位などの提供: 地域の詳細な気象情報や、近くの河川の水位情報などがリアルタイムで確認できます。大雨や台風接近時などに有効です。
- ハザードマップの閲覧機能: 自宅や現在地周辺の地震、洪水、土砂災害などのリスクを地図上で確認できます。自分がどのような危険に晒されているのかを知ることは、適切な避難行動計画を立てる上で不可欠です。
- 避難所の検索・表示: 災害発生時に開設される避難所を地図上で確認できます。現在地から避難所までのルート案内機能を持つアプリもあります。
ご自身の居住地域や勤務先のある地域の自治体が提供する公式アプリは、その地域に特化した情報が得られるため、特に有用です。複数のアプリを組み合わせることで、より多角的に情報を得ることができます。
SNSやウェブサイトからの情報収集
X(旧Twitter)やFacebookなどのSNSは、災害発生時には非常に早い段階で情報が共有されることがあります。しかし、SNS上の情報は個人の投稿が多く、デマや誤った情報が拡散しやすいというリスクも伴います。SNSを情報源とする際は、以下の点に注意が必要です。
- 信頼できるアカウントをフォローする: 気象庁、自治体、公共交通機関、主要な報道機関など、公的機関や信頼性の高い組織の公式アカウントを事前にフォローしておきましょう。
- 情報の真偽を確認する: 一つの情報源だけでなく、複数の信頼できる情報源(例えば、公的機関のウェブサイトや主要ニュースサイト)で情報をクロスチェックすることが重要です。
- 感情的な情報や未確認の情報に惑わされない: 不安を煽るような情報や、公式発表のない未確認情報には注意が必要です。
また、自治体や報道機関のウェブサイトも、正確な情報源として活用できます。スマートフォンからスムーズにアクセスできるよう、ブックマークしておくことも有効な備えです。
テレビ・ラジオのネット配信活用
災害発生により通常のテレビ放送やラジオ放送が見聞きできなくなる場合でも、インターネットを通じてこれらの情報を得られる場合があります。NHKなどの一部放送局は、災害時にニュースなどをインターネット同時配信することがあります。スマートフォンの通信環境が確保できていれば、こうしたサービスも重要な情報源となります。
災害時の連絡手段を確保する
災害発生時には、電話回線が混み合い、音声通話が繋がりにくくなることがあります。また、停電によって自宅の固定電話やインターネット回線が使用できなくなる可能性も考えられます。このような状況下でも、大切な家族や友人との安否確認、情報共有を行うために、複数の連絡手段を準備しておくことが賢明です。
災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言版(web171)
NTTが提供する災害用伝言ダイヤル(171)と災害用伝言版(web171)は、被災地の方と安否を確認したい方が、音声や文字でメッセージを残し、再生・閲覧できるサービスです。
- 171(音声): 被災地の電話番号をダイヤルすると、メッセージを残したり、残されたメッセージを聞いたりできます。
- web171(インターネット): パソコンやスマートフォンからウェブサイトにアクセスし、電話番号やメールアドレスをキーとして、安否情報を文字で登録・確認できます。
これらのサービスは、体験利用できる期間が設けられていますので、実際に利用してみることを強く推奨します。いざという時に慌てず使えるよう、操作方法を理解しておくことが大切です。
メッセージアプリやSNSの活用
LINE、X(旧Twitter)、Facebook MessengerなどのメッセージアプリやSNSは、テキストメッセージのやり取りが音声通話よりも比較的繋がりやすい傾向があります。また、既読機能によって相手がメッセージを確認したかどうかが分かる場合もあります。
- グループ機能の活用: 家族や親しい友人とのグループを作成しておけば、一度に安否情報を共有したり、必要な情報を伝えたりすることが可能です。
- オフライン機能の確認: 一部のアプリには、インターネット接続が不安定な状況でも利用できる機能(例:災害時の通信モードなど)が搭載されている場合があります。
ただし、これらのサービスも大規模な災害時にはアクセスが集中し、利用しにくくなる可能性はあります。
安否確認サービスの登録
企業や学校、あるいは地域によっては、災害発生時に従業員や住民の安否を確認するための専用システムを導入している場合があります。こうしたサービスに登録しておけば、一斉に安否確認のメールやメッセージが届き、自分の状況を報告することができます。ご自身の所属する組織や地域の情報を確認し、該当する場合は登録を済ませておきましょう。
通信機器の充電手段確保
スマートフォンやモバイルWi-Fiルーターなどの通信機器が使えなければ、これらのテクノロジーを活用した連絡や情報収集はできません。停電に備え、以下のような充電手段を準備しておくことが不可欠です。
- モバイルバッテリー: 大容量のものを複数用意しておくと安心です。日常的に充電しておく習慣をつけましょう。
- ポータブル電源: スマートフォンだけでなく、ノートパソコンなども充電できるものがあれば、より多くの機器の利用が可能です。
- ソーラー充電器: 日中の太陽光で充電できるため、長期の停電時にも有効です。ただし、天候に左右される点には留意が必要です。
- 自動車のシガーソケット充電: 自動車をお持ちであれば、車内での充電も可能です。
- 手回し充電ラジオ付きライト: ラジオで情報を得ながら、スマートフォンの充電もできるものがあります。
まとめ:テクノロジーを日々の備えに組み込む
ご紹介したように、テクノロジーは災害時の情報収集と連絡手段の確保において、非常に強力なツールとなり得ます。しかし、これらのツールは「いざ」という時に初めて触れるのではなく、日頃から使い慣れておくことが重要です。
スマートフォンのホーム画面に防災アプリをまとめておいたり、家族間で災害時の連絡方法や集合場所について話し合い、メッセージアプリのグループで共有しておいたりするなど、日常生活の中で無理なくできることから始めてみましょう。
不確実な時代における変化への適応は、特別なことばかりではありません。身近なテクノロジーを賢く活用し、情報へのアクセス手段や大切な人との繋がりを確保しておくことも、暮らしの安心を守るための大切な備えの一つです。この記事が、皆さまの「暮らしの変化対応ノート」に、新しい1ページを書き加える一助となれば幸いです。